≪ 委員長あいさつ 全文 ≫

 第31回拡大委員会にご参加の東日本本部委員をはじめとしました構成員並びに傍聴者の皆さん大変ご苦労様です。委員長の松井でございます。
 また、時節柄大変お忙しいにも拘らずご臨席を頂きましたご来賓の皆様、更には常日頃からご教示を頂いております弁護団の先生方、大変ありがとうございます。今拡大委員会を代表して衷心より御礼申し上げます。
 今委員会の開催にあたり国労東日本本部執行委員会を代表してご挨拶を申し上げます。
 第一点目は、方針書にもありますが、安倍内閣が推し進める現下の状況は、もはや政治情勢・動向という認識で語れるべき状況ではなく、この国のあり様を根底から変質させ、戦争が出来る国から戦争をする国へと急展開で変質させようというものに他なりません。
 私たち国労は戦後間もない1946年に石川県片山津の地で結成をみて以降、反戦・平和、民主主義擁護を掲げ、幾多の困難に直面しても闘い抜いてきた歴史を有しております。
 しかし今日の情勢は改めて言うに及びませんが、単に「国鉄労働組合」云々という課題ではなく、私たちの子や孫、更には声無き世代を「戦争」という、あってはならない現実へと追いやることに直結することは明らかです。
 安倍政権は昨年末に特定秘密保護法案を可決・成立を暴力的に行いました。また、今通常国会で憲法96条が定めた改憲手続きを経ずに、憲法解釈で集団的自衛権行使を容認出来るなどとし、まさに立憲主義を否定するというものです。憲法を頂点とした我が国の法体系を破壊しても安倍首相は「戦後レジュウムからの脱却」=軍国主義復活をことさらに急いでいます。こうした一連の動きと歩調を合わせるように、安倍首相は、本来政治・権力からの独自・独立が求められる「公共放送」であるNHK人事においても、メディアの報道に対して短銃自殺を持って抗議した、右翼活動家を礼賛した「追悼文」を執筆した学者、また、2月9日投票が行われた東京都知事選挙に立候補した右翼思想家の応援演説で、他の候補者を「人間のクズ」などと罵倒した者を経営委員に推薦し、就任させています。更には、安倍政権の肝いりでNHK会長に就任した籾井会長は、就任後の記者会見において「従軍慰安婦問題はどこの国でもあること」などと発言し、韓国のみならず世界中から批判と見識が糾弾されています。
 先にも触れましたが2月9日投開票の東京都知事選挙は、一昨年末の衆議院選挙、昨年夏の参議院選挙に圧勝し、「一党他弱」と評される安倍政権が推し進める急激な軍国主義復活を目指した政治姿勢・路線にブレーキをかけることが出来るか否かが重要な選挙の争点であったにもかかわらず、一部マスコミの恣意的とも思われる「東京オリンピック」に争点が問題にすり替えられ、また、当初重要な課題であった「脱原発・再生エネルギー」問題すら影を潜められてしまったという感です。
 結果は増添要一氏が当選となりましたが、脱原発・反原発、そして安倍政権の進める急激な右傾か路線への批判も数多くあったと見ることが出来ます。
 私たちは今を生きるものとして、誤った歴史を繰り返すことは決して許されません。子々孫々に恥じぬ道を選択し、実践していかなくてはなりません。機関一丸となって反戦・平和の取り組みの再強化が求められています。
 第二の課題については、組織強化・拡大を中心としたJR内における取り組みの強化と方向性についてです。
 一昨年12月に本部は闘争指令第1号を発し、「組織拡大全国統一闘争」を提起しました。東日本本部としても「指令」の重さを十分認識してこの間取り組みを図ってきたところです。昨年8月に開催した大会以降○○名の方の拡大を組合員の奮闘により獲得することが出来ました。
 東日本本部として組織強化・拡大について更なる取り組みを進める上で、再度意思統一することが重要であると考えております。
 端的にいえば何故組織拡大が必要かということであります。数は力であるということは間違いありませんし、その上での辛酸を数多く経験してきました。しかし圧倒的な数を要していても、個々の組合員にとって有益でない場合もあるということです。
 さらに言えば、私たち国労はどういう組織を目指し、誰のための運動を展開するのかということであります。
 私たちの本業である運輸業に例えれば、「行先の無い列車もバスも無い」ということであり、私たち国労という組織がどこに向かうのかということを明確化することが、不採用事件を解決した国労には求められています。解決から実質3年が経過していますが、組織の方向性・行き先が確立し切れていないというのが現状であると認識しています。
 2006年11月中労委におけるJR東日本との一括和解の調印の席上で、当時常務取締役で現在社長に就任している冨田社長は、「組合所属による差別はあってはならないことであるが、社員個々に対する労務管理・人事考課等についてはこれまで以上にしっかりやっていく」との発言をしました。
 一昨年4月1日JR東日本では新たな人事・賃金制度が実施されました。多くは申しませんが、新たな制度では社員個々という文言が数多くあります。いわゆる個人評価が重要視され、評価された社員には「特別加給」等という形でバックペイされます。基本給表が無くなり、賃金が「金額管理」ということから『となり』即ち仲間が見えにくくされています。ややもすると成果型賃金の色合いが濃くなっています。自己解決に走る社員の醸成の浸透が進み易くなり、ひいては団結が阻害され労働組合の存在意義の低下が懸念されます。
 2006年一括和解時の国労組合員の主任職は2ケタでしたが、現在では1,000名に達する数となっています。一方で「係職」に置かれたままの組合員も数多くいるのも現実です。こうした現状は私たちには一面的に差別の解消と映りますが、前述しました中労委での会社側発言からすれば、労務管理・人事考課の物差しを切り替えた故の結論・結果であり、私たちが求める公正・公平と重ね合わせることは出来ません。労働組合として何処に目線を持つのかが問われています。
 2011年11月にJR東日本は、分割・民営化以降5度目の経営戦略構想の「グループ経営構想X−限りなき前進−」を打ち出し、目下その具現化を着々と進めています。前回のグループ経営ビジョン2020〜挑む〜においても同様でしたが、少子高齢化の本格的な到来と将来を見据え、鉄道業・運輸業を基幹としつつも他の事業分野に力点を置く経営が顕在化しています。
 JR東日本発足時の社員数は82,500人とされ、分割・民営化から27年が経過する現状では社員数は56,000人という現状です。一方でグループ会社全体では、契約社員、派遣、パート・アルバイトといった多様な雇用形態を含めると10万人を超えるともいわれ、大多数は「非正規」雇用の労働者です。
 当然私たちが働く運輸業の職域にも数多くのグループ会社が構成され、本体におけるGS社員に象徴される様に、パート・アルバイトを含む非正規社員が将来に不安や動揺を抱きながら従事しています。鉄道業の真のサービスの根幹をなす「安全・安定輸送」は、私たち正規社員のみならず数多くの非正規雇用の仲間たちによって支えられている現実を労働組合としてしっかり見据えなくてはなりません。
 私たち国労の組織と運動のフィールドは、グループ会社を含むJR産別全体です。そうした上からも国労の「立ち位置」を明確にし、更にはグループ会社で働く全ての仲間の視点に沿った組織の確立と運動の展開が求められております。その為の議論の深度化をこれまで以上に図る必要があると考えております。
 第三番目の課題は、安全・安定輸送の確立に関わる課題です。
 JR北海道に関わる問題については、仔細に申し上げるまでもありませんが、私たちが働くJR東日本・JR貨物にとって「対岸の火事」で済ませることが出来るのかという問題です。
 2001年度に施設・電気の職種を中心に「設備メンテナンス再構築」施策が実施され、仕事と職場に大きな変革がもたらされました。そうした職場からの報告の中で組合員からは「人が足りない、時間が無いが職場に蔓延し『見ていないものを見た!やって無いものをやった!』が当たり前になっている」という厳しい報告がありました。私たち国労東日本は、「JR発足20年検証委員会」を立ち上げ、「提言」としてまとめあげました。その提言は今『どこ』にあるのかということを再確認することが重要であると考えております。これまで私たちは、「仕事・職場安全総点検」という取り組みを提起してきましたが、改めて総括が必要であり、具体的な運動の提起と実践が求められています。東日本本部として改めて提起し具体的な取り組みを展開していく決意です。
 第四番目の課題は、明日12日に提出する2014年度新賃金を求める要求を中心とした、2014年春闘についてです。
 メディアをはじめ春闘・賃上げという文言が大きくクローズアップされています。改めて言うまでも無くそうした背景には、「15年続くデフレスパイラルから脱するためには、賃金上昇が不可欠」として財界等に首相自らベア要求をするという、異例中の異例という現象があります。安倍首相の本音は、「大企業には法人税減額してやるから4月1日からの消費税率アップの反感を抑えるために分け前を少し労働者に分けてやれ」というものです。
 まさに「歪な春闘」と言わざるを得ません。労働条件の最たるものである賃金は労使の交渉を中心とした闘いで決するという大前提を消失させてはなりません。今春闘は労働組合の危急存亡をかけたものとなることは必須です。
 国労は先の中央委員会においてベア1万円を決定しました。私たち東日本本部は、一昨年実施された新たな「人事・賃金制度」によって基本給表が廃されたげんじつから「所定昇給額」に消費税率アップの3%を乗じた額を加えることを求める要求を国労統一要求と併せて提出することを執行委員会で確認しました。今後は要求提出以降団体交渉へと推移していきますが、全組合員が共有出来る取り組みの展開が求められております。
 また、国労における春闘の取り組みについてですが、先ほども申し上げました通り賃金は労働条件の最たるものとの認識でおります。従って労使間の交渉を中心に取り組みが展開されるわけですが、取り組みに中心である交渉を担う部分と戦術等を決定・判断する部分とが乖離している現状については、相互理解と全体的な議論を積み上げた上で是正・改善を図り現状や実態に即したものとしなくてはならないと考えております。
 最後となりますが、第27回大会で委員長就任の挨拶で東京の85歳の「現代の名工」に選ばれているウナギ職人の話をさせて頂きました。再度になりますが彼の店は代々天然ウナギを出し続けてきましたが、その入手が困難になり養殖物に切り替えるのでなく暖簾をたたむことを考えたそうです。まさに店の歴史と伝統を重んじれば養殖物に代えられないという思いからです。
 彼は天然がウナギを引き立たせるのではなく、無論「技」は更に極め、ワインなどは高齢にもかかわらず、自らフランスまで行き直接吟味してウナギを引き立たせる物を選ぶなど、新しいものを取り入れることによって「歴史と伝統」を守る道を見出したとのことです。
 即ち、私たち国労も新たな歴史と将来像を求めるのであれば、過去の呪縛を精査し、現状や現実に即した道を自から切り開く以外にはなく、その為には「不文律」の殻を破ることも辞さぬ『大胆さ』と今吹く風を的確に読み取り、組織を前進させる帆を張る『したたかさ』も必要であると考えます。
 今拡大委員会は、国労の屋台骨を支える東日本本部として、組織と運動を最先端で牽引するという意気込みと2014年春闘勝利、平和と民主主義擁護、脱原発・反原発の闘いなどあらゆる闘いの勝利に向けた出発点と位置付け、また、9地本の総団結が図れるための委員会であることを訴え、東日本本部執行委員会を代表しての挨拶といたします。大変ご苦労様です。